どうも、いずです。
ふるよに補集合記事って、結局なんなんですかね……
テーマが無限であるものの、本ブログのメインギミックが禁止カード指定されているので、さながら「戦場」「大手楯無門」のないミズキ様のごとくなってしまいました。それは普通のミズキだろって?
ところで、本当にどんな記事でも書いていいようなので、私が長年やってみたいと思っていた、『BUMP OF CHICKENの曲を使った国語の授業』をしたいと思います。
これであなたも国語力アップ間違いなし。
BUMP OF CHICKENって?
日本のロックバンドグループです。
古のオタク向けでは、「カルマ*3」「ラフ・メイカー*4」などが有名でしょうか。
最近も楽曲をリリースし続けていて、「SOUVENIR*5」「アカシア*6」など聴いたことある方も少なくないのではないでしょうか。
いずは学生時代にハマっていました。めちゃくちゃ詳しい!というわけではないですが、好きなアーティストは?と聞かれたら迷いなく答えるくらいにはお気に入りのバンドです。最近のキレイな感じの曲も好きですが、個人的には、昔の邦ロック感強めの楽曲のほうが好みです。
これは同志向けですが、私が好きな曲は「メーデー」「ロストマン」「メロディーフラッグ」です。†対戦よろしくお願いします†
BUMP OF CHICKENの魅力
まず、”楽曲”なので当然というべきか、メロディーラインがわかりやすく印象的です。先ほど挙げた「天体観測」「ray」「カルマ」などは、イントロでこの曲!と一瞬でわかるようになっています。フレーズさえ聴こえれば、部活などでのコピーバンドでも、十分な聴きごたえになるのは大きな強みです。
しかし、私はBUMP OF CHICKENの魅力はなんといっても『歌詞の美しさ』にあると思っています。
まだキレイなままの 雪の絨毯に
二人で刻む 足跡の平行線
皆さんご存知、スノースマイルの1番のサビです。
『雪の絨毯』の隠喩が良いのはさることながら、『まだキレイなままの』という前置きを作ることで、『雪』という言葉が出てきた瞬間に、聴き手に一気に一面の雪景色を想像させます。また、足跡の『平行線』という言葉の選びも、長く続いている様子や、つかず離れずの『二人』の絶妙な距離感を少ない言葉で見事に表現しているといえるでしょう。
そして、このように鮮烈なイメージをかきたてられた後に、続きの歌詞が『こんな夢物語』と「これは想像の世界だよ」と現実に引き戻してくるのも、また味なのですが、これ以上は本題からそれるので、このくらいで解説をやめましょう。
……といったように、BUMP OF CHICKENの歌詞は文学的な表現がたくさんあり、楽曲の中の世界を美しく彩っているわけです。ならば、この紡がれた言葉を紐解くことで、『国語の表現』を学べるのではないか、と考えた次第であります。
本題
今回、解説するのは、「車輪の唄」です。
アコースティックの軽快なリズムでさわやかな印象の曲です。イントロのギターのフレーズはタイトルの『車輪の唄』にもある通り、自転車のカラカラと車輪が回る音を彷彿とさせます。しかし、歌詞は寂しさをうたっていることもあり、中盤から終盤にかけて、同じ軽快なリズムが様々な感情にかわるBUMP OF CHICKEN名曲中の名曲です。
しかしなんといっても、歌詞がトップクラスによい曲ですので、僭越ながらその歌詞の美しさを私に解説させていただければと思います。
1番から順にみていきます。
錆び付いた車輪 悲鳴を上げ
僕等の体を運んでいく 明け方の駅へと
『車輪の唄』とは一体なんであるのか、ここでしっかり明かされます。『錆び付いた』と『明け方の駅へと』という描写で自然と「電車」の選択肢を省きながら、「自転車」であることを示しています。
こういった「自転車」という言葉を直接使わないことは、表現としてかなり重要です。読み手のイメージが、よくある「自転車」になることを防ぎ、『錆び付い』ていることや、『僕』のもので無骨であろうデザインであることを先にイメージさせ、スムーズに情景を理解させることに繋がります。
『悲鳴を上げ』という擬人法も、ただ使っているわけではありません。マイナスなイメージを持たせることや『僕らの体を運んでいく』といった、受け身な表現(擬人法)と合わせることで、何か寂し気な雰囲気を出すのに一役かっています。
『明け方の駅へと』で時間・場所が確定するのもよいです。
ペダルを漕ぐ僕の背中
寄りかかる君から伝わるもの 確かな温もり
『確かな温もり』を体言止めにすることで、『君』が安心して身を任せている様子が際立ちます。
また、『僕』が大変な思いをして、自転車を漕ぐ描写を先に入れることで、そのあとにくる『君』の様子の対比がキレイです。
線路沿いの上り坂で
「もうちょっと、あと少し」後ろから楽しそうな声
『君』の腕白な性格がわかる描写ですが、わざわざ書くということは『僕』は『楽しそうな』気持ちでないのではないか、と想像させることに繋がります。
町はとても静か過ぎて
「世界中に二人だけみたいだね」と小さくこぼした
意味深な言葉から『僕』の様子がうかがえます。
この台詞は『小さく』言っていることから、同意を得られたいのか、得られたくないのか複雑そうです。『世界中に二人だけみたい』と今、認めてしまうことで、「そうではなくなったとき」が現実味を帯びてしまうからでしょうか。
物静かなところから『僕』は落ち着いている性格ですが、何か思うところがありそうなのが、伝わってきます。
明け方であることから、町が『静か過ぎ』ることは、この後の展開に繋がります。
同時に言葉を失くした 坂を上りきった時
迎えてくれた朝焼けが あまりに綺麗過ぎて
『同時に言葉を失くした』ことから、『僕』と『君』のまさに息の合うような仲の良さがわかり、また、次に来るものの期待値を高めてくれます。
そして、『坂を上りきっ』てから、『朝焼け』を登場させるのが見事です。
感想の『あまりに綺麗過ぎて』もあとはこちらの想像にゆだねる良い表現でしょう。「筆舌に尽くしがたい」とはまさにこのことを表したようなものです。
BUMP OF CHICKENの歌詞の美しさは、この「時間の切り取り方」にあり、美しく見えたものを、見た人と同じ感覚でイメージさせてくれるところにあります。これを音楽に当てはめて綺麗に収めていることは、感服以外の何でもないですね。
笑っただろう あの時 僕の後ろ側で
振り返る事が出来なかった 僕は泣いてたから
対比です。
明るい気持ちである『君』と悲しい気持ちである『僕』が描かれていますが、あくまでも、『君』の気持ちは『僕』からの推測になっています。
ここでは本当の『君』の気持ちは推し量ることはできません。
私たちは『僕』の「思い込み」の中の『君』の様子を『僕』と共有することにより、自然と感情移入させられるわけです。
1番の第3者視点よりの表現に比べて、この先2番はもっと『僕』目線の表現に移り変わっていきます。
券売機で一番端の
一番高い切符が行く町を 僕はよく知らない
その中でも一番安い
入場券をすぐに使うのに 大事にしまった
ここから話がわかりやすく進んでいきます。
どうやら『君』は、どこか遠くの町に行ってしまうようです。『僕』はその見送りに来ているのでしょう。朝早くから出ているのにも、納得ですね。
値段で比べても仕方ないけれど、『僕』にとっては『入場券』はとても「大切なもの」です。『君』と過ごせる残り少ない時間の象徴となるからです。
おととい買った 大きな鞄
改札に引っ掛けて通れずに 君は僕を見た
目は合わせないで 頷いて
頑なに引っ掛かる 鞄の紐を 僕の手が外した
『おととい買った』ことを『僕』が知っていることから、一緒に買いに行ったか、もしくは、行き道にそういった話をしたのか、想像するのも楽しいですし、『目は合わせないで』の部分は、『僕』が先ほど泣いていたのを隠したいのか、『僕』の引っ込み思案な性格の表現なのか、考察の余地がありそうです。
しかし、何気ないエピソードのようですが、ここではとても大事な要素が含まれています。
それは、『僕の手が外した』の所です。
『引っ掛かる鞄の紐』が「君が出発できない」ことを表し、『僕の手が外した』ことにより、「僕が旅立ちを受け入れた」ことを表しています。
このように、「物語」が進むために必要な要素を「過不足なく」「簡潔に」「美しく」表現しているのも、BUMP OF CHICKENの特徴といえます。
響くベルが最後を告げる 君だけのドアが開く
何万歩より距離のある一歩 踏み出して君は言う
……もはや、解説がいらないんじゃないですか?
これ以上言葉で飾ろうとすると、邪魔になる気がしてきます。
『響くベルが最後を告げる』
『君だけのドアが開く』
『何万歩より距離のある一歩』
ただ「電車が発車する」の表現がここまで美しくなるんですね。
どんなもの食べたら、こんなの思いつくのでしょうか。
「約束だよ 必ず いつの日かまた会おう」
応えられず 俯いたまま 僕は手を振ったよ
間違いじゃない あの時 君は…
サビの頭に持ってきた『いつの日かまた会おう』ですが、この話の結論部分でもある大事な文です。
「別れ」を主題にする話はたくさんありますが、
「別れを受け入れなくてはならない」
「いままであったことは決して無駄じゃない」
「出会いに感謝して、明るくお別れをしよう」
こういったメッセージを、今回は使っています。
「車輪の唄」では、少年期くらいの等身大で日常的な描写が多く使われているので、先ほどのメッセージを『また会おう』に込められるわけです。
少々拡大解釈であるところもあるとは思います。ですが、この言葉は『僕』に向けられ話された後、『僕』が反芻し今度は、私たちへのメッセージとして表現されるため、ある程度の意味が込められていることは間違いないと思います。
ちなみに『応えられず』には叙述トリックが使われている、と私は考えます。
線路沿いの下り坂を 風よりも早く飛ばしていく 君に追い付けと
錆び付いた車輪 悲鳴を上げ 精一杯電車と並ぶけれど
ゆっくり離されてく
ここは楽曲らしく1番の変化で構成されているところですので、説明は省きます。1番に出てきた『上り坂』が『下り坂』に変わるのがオシャレですね。
泣いてただろう あの時 ドアの向こう側で
顔見なくてもわかってたよ 声が震えてたから
これは「解釈」の話になるのですが、先ほど出てきた『応えられず』は「僕が別れたくなくて」ではなく「君が泣きそうで、声のかけ方がわからなかったから」が正しいように感じます。『僕』は鞄の紐を外した時点で、ある程度気持ちの切り替えはできていて、逆に『君』がドアのところで思いが溢れてしまった、ということです。
そこで、伝えそびれたことを伝えるため、発車する電車を必死に追いかけるシーンに移る、というわけですね。
あくまでも『僕』目線で別れを惜しむ話として捉えてもよいですが、こうして『僕』が『君』を思いやる話として捉えても味わいがありますね。
約束だよ 必ず いつの日かまた会おう
離れていく 君に見えるように 大きく手を振ったよ
実際に発した言葉ではないでしょう。二人の距離から考えてもそうですし、「」(鍵括弧)がついていないことからも明らかです。
同じ説明となりますが、繰り返し出てきたことから、この言葉が何か私たちに向けたものであるようにも感じられます。
『大きく手を振ったよ』はとてもきれいな帰着です。『大きく』で感情表現も大きくなるので、「遠慮」や「後悔」のない清々しい別れでさわやかな後味を残してくれます。
ここで、話が終わっても美しいですが、BUMP OF CHICKENの物語ではよくサビ後に1番のメロディーでアフターストーリーがついてあります。
町は賑わい出したけれど
世界中に一人だけみたいだなぁ と小さくこぼした
錆び付いた車輪 悲鳴を上げ
残された僕を運んでいく
微かな温もり
『世界中に一人だけみたいだなぁ』は『僕』がまだ『君』がいないことに慣れていないことを示していますね。『町は賑わい出したけれど』からの誘導がかなり美しいです。
最後の『微かな温もり』ですが、これは何を示しているのでしょうか。
1番との対比から考えて、「背中に温もりが残っている」とも考えられますが、まず経過時間から考えて物理的な温度は残っているはずがありません。この場合「君がいるかのような感覚」として使われた言葉ということになります。
また、実は今回は『背中に伝わる』などのかかる修飾語句が存在せず、体言のみの『微かな温もり』という表現です。
単に「気温が上がった」と考えてもよいでしょう。その場合早朝から日が上り、朝がやってきたとなりますが、「朝」は「始まり」「旅立ち」の象徴なので、今回のテーマともかみあいがあります。
「温かい気持ち」かもしれません。先ほどの解釈の続きとなりますが、実は寂しがっていた『君』の姿をみて、『僕』は後から『君』なりの「悲しくならないような気づかい」があったことに気づいたとも考えられます。
これは私たちの解釈にゆだねる表現で正解はありません。
ただ、いずれも『温もり』という良い印象を与える言葉からの考察なので、柔らかな余韻になるのが素晴らしいです。
ですが、この部分を「君がいなくて悲しいな」などどしてしまうと、考察の余地もなくなり、さらに、「悲しい曲」としての印象で締めくくってしまうので、後味もよいものではなくなってしまうでしょう。
本当に言葉選びは大事なんだと実感させられます。
おわりに
ここまで、私の私利私欲に付き合っていただきありがとうございます。
なんと現時点で6,000字を超えており、読むのに耐えられるものができたか疑いしかありません……
よければ、感想など聴かせてくれるとうれしいです。
ではまた、夜に向けた執筆に移ります(どうして同日投稿にしてしまったんだ)
おまけ
〈小テスト〉
① 以下の漢字の読みを答えよ(2点×5)
A. 鞄 B. 紐 C. 俯く D. 微かな E. 賑わう
② 『錆び付いた車輪 悲鳴を上げ』に使われている表現技法は?(10点)
1.対句法 2.体言止め 3.擬人法 4.倒置法
③物語中で『約束だよ 必ず いつの日かまた会おう』は何回発声された?(10点)
1.1回 2.2回 3.3回 4.0回
④『大きく手を振った』とき『僕』が向いていた方角は?(10点)
1.東 2.西 3.南 4.北
⑤『僕』は『君』に恋愛感情はあった?(10点)
1.ある 2.ない
〈答え〉
①A. かばん B. ひも C. うつむ(く) D. かす(かな) E. にぎ(わう)
② 3
③ 1
④ 2 (上り坂の先に朝日があったので、下り坂の先は「西」)
⑤ 2 (この頃BUMP OF CHICKENは「恋愛の曲はない」と宣言していた)